国家的戦略が好影響、チタンにも追い風か
チタン物件の竣工相次ぐ、韓国の建築最新事情
日本販売窓口・新星商事様に聞く
2012年8月8日

■正南津展望台(Jeongnamjin Observation Tower)

 韓国で相次いだチタン適用の意欲的物件、まずその概要からご紹介しますと、正南津展望台(Jeongnamjin Observation Tower)は、韓国南部、釜山の南西約200キロにある海沿いの景勝地・正南津に、2年以上の年月を費やして建設された展望タワーです。

 日本でも近年施工例の多くなったゴールド発色チタンを採用した球体の展望台。太陽が上昇するイメージを表現したいという設計コンセプトの下、最適の材料をリサーチする中で、まさにピッタリだったというのが、新日鐵のゴールド発色チタンでした。

 またメンテナンスが非常に困難という球体の下部、しかも潮風が吹き付ける岬の突端というロケーション。そういった条件からも、メンテナンスフリーのチタンは、比類なき優位性を発揮します。



■セマングム総合広報館(Saemangeum Exhibition Center)

 セマングム総合広報館(Saemangeum Exhibition Center)は、ND20(ロールダル仕上)を採用、施工面積4000平米という大規模物件。

 韓国中部、黄海に面したセマングムは、非常に美しい干潟で知られ、全長33.9キロに及ぶ防潮堤が築かれています。世界最大級のこの防潮堤は、「中国には万里の長城があり、韓国には『海の万里の長城』がある」と賞賛されるほどの壮大なものです。

 現在この地で、2020年をめどに、東北アジアにおける未来型産業および観光レジャーのハブをめざし「世界経済自由都市」の建設が進められており、セマングム総合広報館は、その一翼を担う施設です。


セマングム委員会HPより転載



■日本販売窓口となった新星商事株式会社様

 さて、その日本販売窓口として尽力された新星商事株式会社様。商社的機能を担うだけでなく、設計段階から深く関わり、施工現場においても各種の技術サポートを行われました。

 同社は、表面処理から成型、販売、施工までをトータルにカバーする金属建材の総合企業。守備範囲も、一般住宅から大型公共物件までと幅広く、高品質につくり込まれた材料と、ディテールにこだわった施工技術で実現する高い意匠性により、独自の地位を確立しています。国内はもとより海外での実績も豊富で、設計段階から関わっていく案件が多いのも特色です。

 ちょうど韓国出張から戻ってこられたばかりというご担当者にお伺いしたところ、今回の韓国におけるチタン物件は、

「意匠性に加え、すぐれた耐久性、メンテナンス性を求める施主側の要望に対し、チタンという好適な材料をタイミングよく提案できた」

とのことですが、ここでも国内外に培われた実績とワイドなネットワークが大きく寄与しています。


新星商事本社


正南津展望台着工前
現地での打ち合わせを終えて

■新星商事様に聞く、韓国の最新建築事情

 気になる韓国の建築事情についても、ご担当者から詳しくお伺いすることができました。非常に興味深いお話でしたので、以下、要約してご紹介します。

 近年の韓国では、意匠性が高く資産性にもすぐれた建物が多くなってきています。また、政府や行政が主導する町づくりや都市の再開発にも意欲的なプロジェクトが展開されています。

 たとえば、ソウル郊外のパジュ市には出版関係の企業が集う計画都市があります。設計士が意匠を競うような現代建築の町並みが形成され、「建築村」と呼ばれる区画も出現しています。

 実はこの「パジュ出版都市」のプロジェクトは、韓国を襲ったアジア通貨危機のすぐ翌年の1998年に着手されたものです。すでに200社以上の企業が進出していますが、今も新しい社屋の建築が進んでいて、その中には私どものお客様もいらっしゃいます。

 このほか、ソウル市内を流れるチョンゲチョン(清渓川)は、一時期、水質の汚濁が進んだため暗渠化され、その上に高架道路が建設されたのですが、その道路を撤去し清流を蘇らせるというプロジェクトが、大統領命令で計画されました。今では親水施設も整備され、すっかり観光名所になっています。家族やカップルで日夜にぎわっていますし、日中は働く人々の憩いの場となっています。

 美しい建物を見たり、美しい場所に身を置いたりすると、幸せな気分になるのでしょう。やはり質の高い施設や建物がある所には、こうして自ずと人が集まっています。

 韓国では、建物のデザインや都市の景観に対する一般市民の意識が高まっていますし、業界関係者からも、品質に対する要求が強くなっています。
 それは、科学的な管理手法云々ではなく、よい材料とよい技術でよい建物をつくってほしい、という実にシンプルなものです。
 そして、材料の品質や納まりのよさがそのまま評価されれば、メーカーや施工技術者のモチベーションも上がりますし、その恩恵は必ず施主の方にも返ってきます。もっと「ものづくり」の原点に返るべきだという印象を受けました。

 もちろん韓国と言わず、欧米と言わず、世界のどこでもコスト面での要求はシビアです。ただ、質的に満足のいくものであれば、それは必要な費用だとして納得いただける余地は、広がっているような気がします。

 中でも耐久性ということで言えば、金属建材ではチタンの右に出るものはありません。とくに100年以上、半永久的にメンテナンスフリーで使い続けられるというポテンシャルは、結果的にコストの削減にもつながりますし、世界的にももっと評価が高まるものと期待しています。

 長年来、納まりの美しさにこだわり、意匠性の高さで勝負してきた当社としては、美しい建物が人を呼び、資産的価値を高めているという韓国の状況は大いに励みになりますし、チタンの高耐久性と、私どもの施工技術を組み合わせることで、さらなる市場開拓に挑んでいきたいと思っています。

■変わりゆく韓国に、チタン建材の躍進を期待

 1990年代後半のアジア通貨危機で辛酸をなめて以来、国を挙げて戦略的に経済を動かしている韓国。一定の成果を見るには多少の年月を要したかもしれませんが、10数年を経た今、その蓄積が国全体に大きな活力をもたらしています。

 セマングムにおける「世界経済自由都市」の建設は、この韓国のさらなる躍進を期してのもの。その中核にチタン適用の大型物件が誕生したことは非常に栄誉なことであり、韓国市場にチタン建材の有用性をアピールするという意味でも期待がもたれます。やがては、この干潟地という厳しい腐食環境において、チタンのすぐれた耐候性が証明されることとなるはずです。

 また現在の韓国は、家電・IT産業からK-POP等のサブカルチャーまで、幅広い分野で世界進出を成し遂げ、数々の成功例を生み出していますが、今のお話にもあるように、国家戦略的な公共物件のみならず、市民の暮らしと直接関わる建築や都市インフラの整備においても、長期的な展望に立った意欲的なプロジェクトが鋭意展開されている模様です。


 
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