NHK衛星第一『経済最前線』(2003年11月11日)
NHK総合『おはよう日本』(2003年11月11日)

で、チタン屋根が紹介されました。
(放送の概要)

 京都市上京区北野天満宮、境内の一角にある宝物殿の屋根に、緑色のタイルのようなものが貼られている。実は、これはチタンという金属である。

 チタンは、比強度は鉄の2倍、銅の4倍、軽くて錆びにくく、ゴルフクラブや飛行機にも使われているが、このチタンを屋根に使うお寺や神社が増えている。

 チタン屋根のアイデアは、長年京都でお寺や神社の建築を手がけてきた木下孝一氏(数寄屋研究所・心傳庵代表)のアイデアによるもの。一休寺(京都府京田辺市)の田辺宗一住職から、「屋根の修理に費用がかかりすぎて困っている」と相談を受けたのをきっかけに、どんな素材が適しているか研究を始めた。

 これまでお寺の屋根には、檜皮や柿(こけら)などが使われてきたが、いずれも傷みやすく、修理には大きな費用がかかる。銅の屋根や雨樋は、雨が降ると成分が流れ出て大切な苔が枯れるなど環境に悪い影響を与えている。

 木下氏がさまざまな金属を調べた結果、「お寺の屋根には、錆びに強く環境にもやさしいチタンがベスト」であるとわかった。一休寺では書院をはじめ4つの建物にチタンの屋根を葺いている。


 チタンは光沢をもつ素材。木下氏がもっとも苦労したのは、チタンをお寺や神社の屋根に合う色に加工すること。大手鉄鋼メーカー(新日本製鐵)と共同で試行錯誤を重ねた結果、アルミナの粉を強く吹き付けることで、渋い色合いを出すことができた。

木下氏「どうにかして、日本古来の瓦の色にならないか。屋根材に使うには、瓦の何とも言えないいぶした色にならねばならない。あの色が長年、日本建築になじんでいるから。そのためにたいへんな苦労をした。現在のようないい色のチタンになるのに数年かかった」

 チタンの新しい利用に期待しているのが鉄鋼メーカー。チタンの使い道が広がれば、新しいビジネスチャンスが生まれるとして、お寺や神社だけでなく、一般の住宅にも利用を広げていくとしている。
 チタンは銅の2倍近く割高だが、葺き替えの必要がなく、長期で見れば安上がり。普及が進めば、製造コストをさらに下げることができる。
 インタビューを受けた新日本製鐵チタン事業部・阿部光範氏が「収益の柱になるくらい今後、成長が期待できる金属。どんどん拡大を図っていく」とコメント。

 その将来性から「夢の金属」と呼ばれるチタン。伝統的な建物にも少しずつ利用が広がっている。